【遺言書の教科書】自筆証書と公正証書どっちがいい?法務局保管制度も徹底解説

争続にならないための準備

「うちの家族は仲が良いから、遺言書なんて大げさだよ」

「財産といっても、揉めるほどのものはないし…」

多くの方が、そう思っているかもしれません。しかし、相続が「争続」に変わるきっかけは、財産の多少ではありません。ほんの少しのボタンの掛け違いや、残された家族の「知らなかった」という想いです。

大切な家族が、あなたの死後、お金のことでいがみ合う姿を想像してみてください。そんな悲しい未来を避けるために、元気なうちに準備できる最も有効な手段が**「遺言書」**です。

遺言書は、単に財産の分け方を指示する書類ではありません。あなたが家族に遺す、最後の「感謝」と「思いやり」のメッセージです。

この記事では、「遺言書を書いてみようかな」と考え始めた方のために、

  • 代表的な遺言書の種類と、それぞれのメリット・デメリット
  • 手軽な「自筆証書遺言」と、確実な「公正証書遺言」のどちらを選ぶべきか
  • 自筆証書遺言の弱点を克服した画期的な**「法務局保管制度」**

について、どこよりも分かりやすく徹底的に解説していきます。

目次

  1. そもそも、なぜ遺言書は必要なのか?
  2. 遺言書の主な種類|まずは全体像を掴もう
  3. ① 手軽さが魅力「自筆証書遺言」のメリット・デメリット
    • メリット:費用をかけず、いつでも書ける
    • デメリット:無効のリスクと、死後の「検認」という手間
  4. ② 確実性と信頼性が最大の武器「公正証書遺言」のメリット・デメリット
    • メリット:無効になる心配がほぼなく、死後の手続きもスムーズ
    • デメリット:費用と手間がかかる
  5. 【本記事の核心】自筆証書遺言の決定版!「法務局保管制度」を徹底解説
    • 「法務局保管制度」とは?
    • 最大のメリットは「検認が不要」になること
    • 紛失・改ざんのリスクがゼロに
    • 死後、相続人に通知がいく仕組み
    • 利用の流れと費用
  6. 結局、どの遺言書を選べばいい?目的別おすすめガイド
    • ケース1:とにかく費用を抑えたい、でも安心も欲しい方
    • ケース2:多少費用がかかっても、最高の確実性を求める方
    • ケース3:病気などで字が書けない、専門家に全て任せたい方
  7. まとめ:遺言書は、元気なうちに始める最高の「終活」

1. そもそも、なぜ遺言書は必要なのか?

遺言書がない場合、法律で定められた相続人(法定相続人)全員で、「誰が、どの財産を、どれだけ相続するか」を話し合って決める**「遺産分割協議」**が必要になります。

この協議が、トラブルの温床です。「長男の俺が家を継ぐべきだ」「親の介護を頑張った私の方が多くもらう権利がある」など、それぞれの想いや事情がぶつかり合い、協議がまとまらなければ、家庭裁判所での調停や審判に発展することもあります。

遺言書があれば、この遺産分割協議を原則として行う必要がなく、あなたの意思に沿ったスムーズな財産承継が可能になるのです。

2. 遺言書の主な種類|まずは全体像を掴もう

遺言書にはいくつか種類がありますが、一般的に利用されるのは以下の3つです。

  • 自筆証書遺言:全文を自分で手書きする、最も手軽な方式。
  • 公正証書遺言:公証役場で、公証人に作成してもらう、最も確実な方式。
  • 秘密証書遺言:内容は秘密にし、存在だけを公証役場で証明してもらう方式。(手続きが煩雑なため、利用は稀です)

今回は、特に利用されることの多い「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」を深掘りしていきます。

3. ① 手軽さが魅力「自筆証書遺言」のメリット・デメリット

メリット:費用をかけず、いつでも書ける

紙とペン、印鑑さえあれば、思い立った時にいつでも、誰にも知られずに作成できます。費用がほとんどかからないのが最大の魅力です。

デメリット:無効のリスクと、死後の「検認」という手間

手軽な反面、多くのデメリットを抱えています。

  • 要件が厳しく、無効になりやすい法律で定められた形式(①全文自筆、②日付、③氏名、④押印)を一つでも欠くと、その遺言書は無効になってしまいます。「令和〇年8月吉日」といった曖昧な日付や、パソコンで作成した本文はNGです。
  • 紛失・改ざん・隠匿のリスク自宅で保管していると、紛失してしまったり、悪意のある相続人が見つけて破棄・改ざんしたりする危険性があります。
  • 家庭裁判所の「検認」が必要自筆証書遺言が見つかった場合、相続人は家庭裁判所にそれを提出し、**「検認」**という手続きを受けなければなりません。これは遺言書の偽造などを防ぐための手続きですが、戸籍謄本の収集などが必要で、完了まで1〜2ヶ月かかることもあり、残された家族に大きな負担をかけます。

これらのデメリットから、かつては「手軽だが、あまりお勧めできない」と言われることもありました。しかし、その状況を劇的に変えたのが、次に紹介する「法務局保管制度」です。

4. ② 確実性と信頼性が最大の武器「公正証書遺言」のメリット・デメリット

メリット:無効になる心配がほぼなく、死後の手続きもスムーズ

公証人という法律の専門家が関与して作成するため、形式の不備で無効になる心配はまずありません。また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクもありません。そして何より、家庭裁判所での「検認」が不要なため、相続開始後、すぐに名義変更などの手続きに進むことができます。

デメリット:費用と手間がかかる

作成には、証人2人の立会いが必要です。また、財産の価額に応じた手数料がかかります。例えば、財産が3,000万円の場合、手数料は3万円程度が目安となり、その他にも必要書類の取得費用などがかかります。

5. 【本記事の核心】自筆証書遺言の決定版!「法務局保管制度」を徹底解説

ここが本記事で最もお伝えしたいポイントです。2020年7月から始まったこの制度は、自筆証書遺言のデメリットをほぼ解消する、画期的なものです。

「法務局保管制度」とは?

自分で書いた自筆証書遺言を、法務局(登記所)に預かってもらえる制度です。これにより、**「自筆証書遺言の手軽さ」と「公正証書遺言の安全性」の”いいとこ取り”**が可能になりました。

最大のメリットは「検認が不要」になること

法務局に預けた遺言書は、家庭裁判所での検認が一切不要になります。これは非常に大きなメリットで、残された家族の負担を大幅に軽減できます。この一点だけでも、この制度を利用する価値は絶大です。

紛失・改ざんのリスクがゼロに

原本は法務局の施設で厳重に保管され、データとしても保存されるため、紛失や改ざん、災害による焼失などの心配がありません。

死後、相続人に通知がいく仕組み

この制度の優れた点として、相続人が一人でも「遺言書情報証明書」の交付請求(遺言書の閲覧請求)をすると、法務局から他の全ての相続人に対して、「遺言書が保管されていますよ」という通知が発送されます。

これにより、「一部の相続人だけが遺言書を見て、自分に不利な内容だったからと黙っている」といった事態を防ぎ、公平性が保たれます。

利用の流れと費用

  1. 遺言書を作成する:自筆証書遺言のルール通りに作成します。ただし、財産目録(財産のリスト)はパソコンでの作成や、通帳のコピーを添付することが認められており、作成の負担が軽くなっています。
  2. 法務局を予約する:専用サイトから、保管を申請する法務局を予約します。
  3. 法務局で申請する:予約した日時に、作成した遺言書、申請書、本人確認書類などを持って法務局へ行きます。職員が、日付や署名など形式面の不備がないかだけをチェックしてくれます。(※内容の相談には乗れません)
  4. 手数料を納付する1通あたり3,900円という非常に安価な手数料で利用できます。

6. 結局、どの遺言書を選べばいい?目的別おすすめガイド

ここまで解説した内容を踏まえ、あなたに最適な遺言書の形式を考えてみましょう。

ケース1:とにかく費用を抑えたい、でも安心も欲しい方

→ 自筆証書遺言を作成し、「法務局保管制度」を利用する

これが、現在の最もコストパフォーマンスに優れた選択肢と言えるでしょう。数千円の費用で、検認不要・紛失リスクなしという大きな安心感を得られます。

ケース2:多少費用がかかっても、最高の確実性を求める方

→ 公正証書遺言

財産内容が複雑であったり、相続人間で揉める可能性が少しでもある場合、あるいは自分の意思を法的に完璧な形で残したい場合は、公証人が内容まで確認してくれる公正証書遺言が最適です。

ケース3:病気などで字が書けない、専門家に全て任せたい方

→ 公正証書遺言

公正証書遺言は、本人が口述した内容を公証人が筆記するため、自筆が難しい方でも作成可能です。専門家に相談しながら、内容を固めていきたい方にも向いています。

7. まとめ:遺言書は、元気なうちに始める最高の「終活」

遺言書を作成することは、決して「死」を意識したネガティブな行為ではありません。むしろ、あなたがこれまで築き上げてきた大切な財産と、家族への想いを、最も良い形で未来へ繋ぐための、愛情あふれるポジティブな活動です。

特に「法務局保管制度」の登場により、自筆証書遺言は非常に使いやすく、安心な制度に生まれ変わりました。

「いつか書こう?」

「今でしょ!」

この記事をきっかけに、あなたの大切な家族への「最後のラブレター」を準備してみてはいかがでしょうか。その一歩が、残された家族にとって、何物にも代えがたい「安心」という贈り物になるはずです。

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