※はじめにお読みください※
この記事は、デジタル遺産の相続に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の事案に対する法的なアドバイスを行うものではありません。具体的な対策にあっては、必ず弁護士、司法書士、税理士などの専門家にご相談ください。
「相続財産」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
実家の土地や建物、銀行の預金通帳、タンスにしまわれた現金…これまでの相続は、そんな「目に見える」資産が中心でした。
しかし、時代は静かに、そして劇的に変化しています。
先日、株式会社GOODREIが発表した「新・相続実態調査2025」というレポートに、私は衝撃を受けました。そこには、過去5年以内に相続を経験した人のうち、実に4人に3人(73%)が「デジタル金融資産」を相続していたという、驚くべき実態が示されていたのです。
デジタル金融資産とは、ネット銀行やネット証券、仮想通貨、電子マネーなど、物理的な通帳や店舗を持たない資産のこと。かつては一部のITに詳しい人だけの話だと思われていました。しかし、この調査結果は、**デジタル遺産の相続が、もはや一部の特殊な話ではなく、ほとんどすべての家庭で起こりうる「新しい常識」**であることを、私たちに突きつけています。
この記事では、この衝撃的な調査結果を紐解きながら、なぜデジタル遺産の相続がこれほどまでに困難なのか、そして、あなたとあなたの家族が“デジタル資産難民”にならないために、今日からできる具体的な対策について、私の感想を交えながら解説していきます。
目次
- 相続の風景は一変した!調査結果が示す「4つの衝撃的な事実」
- 事実①:もはや他人事ではない。4人に3人がデジタル遺産を相続
- 事実②:若い世代ほど資産はデジタルへ。40代以下は相続率100%
- 事実③:金額も大きい。資産形成の中心は50代
- 事実④:手続きは長期化。10ヶ月の期限に間に合わないケースも
- なぜデジタル遺産の相続は難しいのか?立ちはだかる「3つの壁」
- 壁①:見つけられない「見えない資産」
- 壁②:突破できない「ID・パスワードの壁」
- 壁③:残された家族の「ITリテラシーの壁」
- あなたの家族は大丈夫?2つの視点から考えるべきこと
- 【遺す側(親世代)の視点】あなたの責任は、財産を遺す“だけ”ではない
- 【遺される側(子世代)の視点】「親は大丈夫」という思い込みを捨てる
- デジタル資産を円満に引き継ぐための「3つのステップ」
- ステップ①:「デジタル資産目録」を作成する
- ステップ②:「パスワード情報」の保管場所を決める
- ステップ③:家族と情報を「共有」する
- まとめ:最高のデジタル終活は、元気なうちの「情報整理」と「対話」
1. 相続の風景は一変した!調査結果が示す「4つの衝撃的な事実」
今回の調査結果で、特に私が重要だと感じた4つのポイントをご紹介します。
事実①:もはや他人事ではない。4人に3人がデジタル遺産を相続
驚くべきことに、相続経験者の73%がネット銀行やネット証券、電子マネーなどのデジタル金融資産を相続していました。これは、「うちは親がパソコンやスマホに疎いから関係ない」という思い込みが、もはや通用しないことを意味します。
事実②:若い世代ほど資産はデジタルへ。40代以下は相続率100%
故人が40代以下の場合、デジタル金融資産の相続率は100%でした。これは、これからの未来の相続は、ほぼ全ての資産がデジタル空間に存在するようになることを示唆しています。実家のタンスではなく、故人のスマホやPCの中にこそ、本当の“財産”が眠っている時代なのです。
事実③:金額も大きい。資産形成の中心は50代
「デジタル資産なんて、少額の電子マネーくらいだろう」と思っていませんか?調査では、故人が50代の場合に相続額がピークを迎え、「100万円〜3,000万円」のデジタル金融資産を相続したケースが68%を占めていました。これは、働き盛りの世代が、資産運用の主戦場をネット証券などに移している現実を反映しています。
事実④:手続きは長期化。10ヶ月の期限に間に合わないケースも
最も深刻なのが、相続にかかる時間です。デジタル遺産があった場合の相続手続きは、全体の60%が3ヶ月以上を要し、**相続税の申告期限である10ヶ月を超えてしまったケースも5%**存在しました。これは、資産が見つからずに税務申告が遅れ、ペナルティ(延滞税など)が発生するリスクをはらんでいます。
2. なぜデジタル遺産の相続は難しいのか?立ちはだかる「3つの壁」
なぜ、デジタル遺産の相続はこれほどまでに時間がかかり、困難なのでしょうか。そこには、従来の相続にはなかった「3つの壁」が存在します。
壁①:見つけられない「見えない資産」
従来の相続では、自宅に届く銀行や証券会社からの郵便物が、資産の存在を知らせる重要な手がかりでした。しかし、ネット銀行やネット証券は、取引の通知も明細も全てオンラインで完結します。物理的な手がかりが一切ないため、家族はその存在に気づくことすらできないのです。
壁②:突破できない「ID・パスワードの壁」
たとえ、故人がネット証券の口座を持っていたことを知っていても、IDとパスワードが分からなければログインできません。金融機関に問い合わせても、本人確認のプロセスは非常に厳格で、戸籍謄本など多くの書類を揃えて申請し、手続きが完了するまで数ヶ月かかることも珍しくありません。資産のありかは分かっているのに、目の前に鉄の扉が閉ざされているような状態です。
壁③:残された家族の「ITリテラシーの壁」
故人がITに詳しくても、相続する家族がITに不慣れな場合、問題はさらに深刻化します。仮想通貨のウォレットや、海外のFX口座など、専門的な知識がなければ理解すら難しい資産も増えています。
3. あなたの家族は大丈夫?2つの視点から考えるべきこと
この新しい現実に、私たちはどう向き合えば良いのでしょうか。
【遺す側(親世代)の視点】あなたの責任は、財産を遺す“だけ”ではない
これからの時代、財産を遺す側の責任は、ただお金を貯めることだけではありません。その財産へ**「たどり着くための地図」**を残すことまでが含まれます。あなたが苦労して築いた資産が、パスワードが分からないというだけの理由で、誰にも引き継がれずに失われてしまうことほど、悲しいことはありません。
【遺される側(子世代)の視点】「親は大丈夫」という思い込みを捨てる
「親に資産の話をするのは、なんだかお金を催促しているようで気が引ける…」その気持ちはよく分かります。しかし、この問題はもはや、そんな遠慮が許される段階ではありません。
親が元気なうちに、「もしもの時のために、どこのネット銀行を使っているかだけでも教えてくれない?」と聞いておくこと。それは、親の財産を詮索する行為ではなく、親の資産を守り、自分たちが将来困らないようにするための、愛情と責任に基づいた行動なのです。
4. デジタル資産を円満に引き継ぐための「3つのステップ」
では、具体的に何をすればよいのでしょうか。今日から始められる3つのステップをご紹介します。
ステップ①:「デジタル資産目録」を作成する
まずは、ご自身が利用しているデジタル金融サービスを全て書き出しましょう。
- サービス名(例:楽天銀行、SBI証券、PayPay)
- ログインIDや口座番号(分かる範囲で)
- 連絡先やウェブサイトのURL
これを一覧にしておくだけで、残された家族の手間は劇的に減ります。
ステップ②:「パスワード情報」の保管場所を決める
最も重要なパスワードの管理ですが、目録に直接書き込むのはセキュリティ上危険です。
- 物理的に保管:パスワードをメモしたノートを、貸金庫や信頼できる専門家(弁護士など)に預ける。
- デジタルで管理:パスワード管理アプリの「緊急アクセス機能」などを設定し、万が一の際に指定した家族がアクセスできるようにしておく。
重要なのは、「パスワードそのもの」と「そのありか」を分けて管理し、信頼できる人にだけ「ありか」を伝えておくことです。
ステップ③:家族と情報を「共有」する
この準備が万全でも、その存在を家族が知らなければ意味がありません。遺言書やエンディングノートに、「デジタル資産の目録は、書斎の金庫に保管してある」といった一文を必ず書き記し、その旨を遺言執行者や信頼できる家族に伝えておきましょう。
5. まとめ:最高のデジタル終活は、元気なうちの「情報整理」と「対話」
今回の調査結果は、相続の形が、私たちが思っている以上のスピードで変化していることを示しています。故人の思い出の品を整理するように、故人のスマホやPCのデータを整理することが、これからの相続の当たり前の風景になるでしょう。
あなたのデジタル資産は、あなたが生きてきた証そのものです。それが、あなたの死後、家族を悩ませる「負の遺産」にならないように。
元気なうちに、ご自身のデジタル情報を整理し、家族と対話する時間を持つこと。それこそが、変化の時代における、最高の「終活」であり、家族への最も深い愛情表現なのかもしれません。

